2010年2月9日火曜日
食い違った愛の姿「愛を読むひと」
男と女のすれ違いは常、そこに育った環境や
知的レベルの差といった致命的なズレが加われば
その“愛”は一体化するはずもなく。
それでも確かに存在した愛、伝わらなかった想いと
それぞれの葛藤、決断。
気弱な少年にとって彼女は自分を認めてくれた
初めての女性であり原点ともいえる存在。
あるハンデを背負う彼女にとって
少年は唯一のつながりであり、
孤独な人生に差し込む一筋の光となった。
年上女と少年の恋愛モノかと思ったら大間違い。
全編を通して、心臓が締めつけられるような
苦しみに満ちた作品。感動とか愛とか
そういった単語では片付けられないものが
この映画(原作)にはある。
ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズという
説明不要のイギリス人実力派ふたりに加えて
脇を固めるブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、
そして少年役のデビッド・クロスという、
出演者全員の演技が本当に素晴らしい。
「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」
のスティーブン・ダルドリー監督による
文学的かつ繊細な演出も文句なし。
彼女は少年の些細な変化を敏感に感じ取り、
本能的な防御反応から彼の元を去った。
拒絶されたと感じた少年は以後そのトラウマに
人生を支配されることになる。
二人とも、それぞれ異なる理由で、
辛すぎて、逃げた。
収監された彼女に対して彼が示した
ジャッジメンタルな態度は、彼女を
殺すに等しい痛烈な一撃となる。
彼の存在は、彼女の唯一の生きる希望
であったにも関わらず。
お互いに“傷つきたくない”という
思いが招いた悲劇、致命的な食い違い。
この二人どちらに対しても観客は
批判なんてできるはずもない。
人はそんなに強い存在ではないのだから。
センチメンタリズムや安易な導きは
一切ない、二人の男と女の人生の物語。
※2009年公開映画のベスト10をちょっと前に
書きましたが、その後DVDで鑑賞した
「愛を読むひと」「レイチェルの結婚」
「3時10分、決断のとき」「レスラー」など
秀作ぞろいでランキングはだいぶ変化しております。
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